家電の裏側に「50Hz/60Hz」と書かれているのを見たことがあると思います。九州は60Hz。この数字は、ほぼいつも、ほぼぴったり守られています。
当たり前のようですが、これは自然にそうなっているのではありません。誰かが守っている結果です。
電気は、作った瞬間に使われている
電力系統の厄介なところは、電気を溜めずに流していることです。発電量と消費量は、常に一致していなければなりません。これを同時同量と呼びます。
一致しないとどうなるか。需要より発電が多ければ周波数は上がり、少なければ下がります。ずれが大きくなると機器が壊れたり、発電機が系統から切り離されたりして、最悪の場合は停電に広がります。
ところが需要のほうは、こちらの都合を聞いてくれません。テレビの番組が終わって一斉にお湯を沸かす。雲が太陽を隠して太陽光の出力が数分で落ちる。工場が一つ止まる。秒単位で需要と供給はずれ続けます。
ずれた分を、誰かが埋めている
そのずれを埋めているのが「調整力」です。出力を上げ下げできる電源が待機していて、系統からの指令に応じて即座に応答する。この働きによって、周波数は一定の幅に収まり続けています。
派手な仕事ではありません。普段は誰も気づきません。うまくいっている限り、何も起きていないように見えるからです。設備の運転を支える裏方の仕事とは、だいたいそういうものです。
待機していること自体が、商品になった
面白いのは、この「待機する能力」が制度上の商品になっていることです。需給調整市場では、応答できる状態で待っていることに対価が支払われます。実際に指令が来て動いた分は別に精算されます。
つまり、何も起きていない時間にも価値がある。稼働率が低いから採算が悪い、という常識が通じない世界です。
蓄電池がこの市場で評価されるのは、応答が速いからです。火力発電のように出力を上げるのに時間を要することがなく、指令から数秒の単位で充電にも放電にも振れます。裏方の仕事に向いた性質を、もともと持っている設備だと言えます。
2026年4月からは低圧の蓄電池もアグリゲーター経由で需給調整市場に参加できるようになりました。50kW未満の設備が、この裏方の列に加われるようになったということです。
仕組みをもう少し詳しく
- 市場の区分と収益源の整理 → 需給調整市場と容量市場の違い
- 実際の約定データ → 「待機するだけでお金になる」一次調整力の実データ
- 誰が指令を出しているのか → アグリゲーターとは
今日も、どこかで誰かが待機しています。そのおかげで、冷蔵庫は静かに回り続けています。
※市場価格・制度内容は時期により変動します。
