前編 で、JEPXスプレッドが太陽光増設により構造的に拡大していることを見ました。本記事ではそれ以外の 2つの拡大要因 と、 縮小リスクとなりうるシナリオ をフラットに検討します。
構造的拡大の理由②:電力需要構造の変化
第二の要因は、 電力需要そのものの形が変わってきている ことです。
EVと家電の影響
電気自動車(EV)、エコキュート、ヒートポンプの普及で、 夜間〜朝の時間帯に充電・蓄熱する需要が増えています。これは深夜の電力需要を押し上げます。
一方、リモートワークやLED化により、 オフィスビルの昼間ピーク需要は減少傾向 にあります。
結果として、 夜の需要が増え、昼の需要は微減 という変化が起きており、 昼夜のスプレッドが大きくなる方向に圧力がかかります。
データセンター需要の追い風
生成AIブームに伴いデータセンターの電力需要が拡大しています。これは24時間ベースロード需要を増やすため、 絶対的な電力価格水準を底上げ する効果があります。蓄電池の売電単価が全体として上がる方向に効きます。
構造的拡大の理由③:容量市場と需給調整市場の影響
第三の要因は、 電力市場制度の進化 です。
容量市場
容量市場は、 「将来も電力供給力を維持してもらうために、発電事業者に対して『発電能力(容量)』に対する報酬を支払う仕組み」 です。2024年度から本格稼働しています。
蓄電池もこの市場に参加でき、 「需要ピーク時に放電できる能力」を売る ことで、JEPXスポット市場とは別の収益源を確保できます。
需給調整市場
需給調整市場は、 「電力系統のリアルタイムな需給バランス調整に貢献する電源」に対して報酬を支払う市場 です。蓄電池は 応答速度が速い という特性から、需給調整市場で高い評価を受けています。
JEPXスポット市場とのアービトラージに加えて、これらの市場からの 「調整力収益」 が積み上がってきています。
詳細は 「容量市場とは何か」 で詳述します。
「スプレッドが縮まるリスク」はあるか
楽観論ばかりではなく、 スプレッド縮小リスクも公正に検討 すべきです。
縮小要因となりうるシナリオ
- 大型原発の再稼働ラッシュ:原発はベースロードが安価なため、夜間価格を引き下げる可能性
- 蓄電池の大量導入による市場効率化:蓄電池が増えれば、スプレッドを取り合う競合が増え、平均スプレッドが縮む可能性
- 電力卸価格全体の暴落:景気後退や燃料価格急落で、絶対水準が下がる可能性
実際の見通し
これらのリスクはありますが、 「太陽光が増え続ける」「需要構造が変化している」という2つの大きなトレンド は10年単位で続くものです。
スプレッドの絶対値は短期的に上下しても、 平均20円/kWh前後の水準は中長期に維持される というのが、多くの業界アナリストのコンセンサスです。
蓄電池オーナーの戦略的位置
JEPXスプレッド拡大という流れの中で、 早期に蓄電池を持っている事業者ほど、市場拡大の波に乗れる という構図があります。
なぜなら、
- 立地良好な土地は枯渇しつつある(系統連系容量が逼迫)
- 法改正・補助金は今後も拡大方向
- 中古市場が形成された後は、 蓄電池の資産価値そのものが上がる 可能性が高い
からです。 「成長市場の初期に資産を持つ」 という古典的な投資定石が、ここでも当てはまります。
まとめ
JEPXのスプレッドは、 太陽光増設・需要構造変化・市場制度進化 の3つの構造要因により、中長期で拡大方向にあります。短期的な縮小要因はあるものの、 平均20円/kWh前後の水準は10年単位で維持される との見方が業界のコンセンサスです。
蓄電池投資の収益性は、この 構造的なスプレッド に支えられています。市場拡大の波を取りに行きたい方は、 お問い合わせフォーム からご相談ください。
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