蓄電池ビジネスの初心者向け解説では、しばしば 「JEPXのスプレッドで稼ぐ」 という単一の収益モデルだけが語られます。
しかし、実務の世界では、蓄電池は 複数の電力市場から並列に収益を得る ことができます。これを業界では 「レベニュースタック(収益の積み上げ)」 と呼びます。
本記事では、 3つの収益市場の全体像と、容量市場の仕組み を解説します。
蓄電池が参加できる3つの電力市場
まず全体像を整理します。
| 市場 | 何を売るか | 報酬の性質 |
|---|---|---|
| JEPXスポット市場 | 電力エネルギー(kWh) | 価格差収益 |
| 容量市場 | 将来の発電・放電能力(kW) | 容量に応じた固定報酬 |
| 需給調整市場 | 需給バランス調整能力 | 応答速度に応じた報酬 |
このうち、JEPXスポットは「価格差を取りに行く動的な収益」、容量市場と需給調整市場は 「あらかじめ契約しておく安定的な収益」 という性質の違いがあります。
蓄電池は 3つすべてに参加可能 であり、これらを組み合わせることで安定性と収益性を両立できます。
容量市場:「能力」を売る市場
何のための市場か
容量市場は、 「将来、電力需要のピーク時に確実に電力供給できる能力を確保する」 ために設けられた市場です。
電力需要は冬と夏のピーク時に跳ね上がります。このときに供給力不足になると停電リスクが発生するため、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が 4年先のピーク時に対応できる発電・放電能力をオークションで募集 します。
蓄電池はこの市場に参加でき、 「ピーク時に放電できる」という能力に対して固定報酬 が支払われます。
仕組み
- 4年先の容量を入札:例えば2026年に2030年度の容量オークションが実施される
- シングルプライス方式:JEPXスポット同様、全員同じ約定価格で契約
- kW単価で報酬:実効容量1kWあたり、年間 数千〜1万円程度の報酬
蓄電池の収益への寄与
仮にAC50kW蓄電池が容量市場に参加し、約定価格が8,000円/kW/年だった場合、
容量市場収益 = 50kW × 8,000円 = 約 40万円/年
JEPXスプレッド収益の 約7-10%程度を底上げ する効果があります。地味ですが、 天候・市場価格に左右されない確実な収益 という意味で、ポートフォリオに安定性を加える重要な役割を果たします。
参加方法
低圧蓄電池の場合、 アグリゲーター(取りまとめ事業者)経由で参加 するのが一般的です。単独で50kW未満では入札最小単位を満たさないため、複数の蓄電池を束ねて参加する仕組みです。
まとめ
蓄電池の収益は 「JEPXだけ」ではなく、複数市場のレベニュースタック で考えるのが業界標準です。
- JEPXスポット市場(主要):価格差収益
- 容量市場(補強):将来の能力に対する固定報酬
- 需給調整市場(補強):応答速度に応じた報酬
容量市場では年間40万円程度の上乗せが見込めます。続編では、もう一つの追加収益源である 需給調整市場 の仕組みと、3市場を束ねる アグリゲーター の役割を解説します。