株式会社信和 低圧系統用蓄電池事業

蓄電池の収益スタック ── 3つの電力市場と容量市場の仕組み

業界動向2026-03-28読了 4
電力系統と取引市場のイメージ

蓄電池ビジネスの初心者向け解説では、しばしば 「JEPXのスプレッドで稼ぐ」 という単一の収益モデルだけが語られます。

しかし、実務の世界では、蓄電池は 複数の電力市場から並列に収益を得る ことができます。これを業界では 「レベニュースタック(収益の積み上げ)」 と呼びます。

本記事では、 3つの収益市場の全体像と、容量市場の仕組み を解説します。

蓄電池が参加できる3つの電力市場

まず全体像を整理します。

市場 何を売るか 報酬の性質
JEPXスポット市場 電力エネルギー(kWh) 価格差収益
容量市場 将来の発電・放電能力(kW) 容量に応じた固定報酬
需給調整市場 需給バランス調整能力 応答速度に応じた報酬

このうち、JEPXスポットは「価格差を取りに行く動的な収益」、容量市場と需給調整市場は 「あらかじめ契約しておく安定的な収益」 という性質の違いがあります。

蓄電池は 3つすべてに参加可能 であり、これらを組み合わせることで安定性と収益性を両立できます。

3市場のレベニュースタック
JEPXスポット単独より、3市場活用で約16-18%多い収益が得られる。

容量市場:「能力」を売る市場

何のための市場か

容量市場は、 「将来、電力需要のピーク時に確実に電力供給できる能力を確保する」 ために設けられた市場です。

電力需要は冬と夏のピーク時に跳ね上がります。このときに供給力不足になると停電リスクが発生するため、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が 4年先のピーク時に対応できる発電・放電能力をオークションで募集 します。

蓄電池はこの市場に参加でき、 「ピーク時に放電できる」という能力に対して固定報酬 が支払われます。

仕組み

  • 4年先の容量を入札:例えば2026年に2030年度の容量オークションが実施される
  • シングルプライス方式:JEPXスポット同様、全員同じ約定価格で契約
  • kW単価で報酬:実効容量1kWあたり、年間 数千〜1万円程度の報酬

蓄電池の収益への寄与

仮にAC50kW蓄電池が容量市場に参加し、約定価格が8,000円/kW/年だった場合、

容量市場収益 = 50kW × 8,000円 = 約 40万円/年

JEPXスプレッド収益の 約7-10%程度を底上げ する効果があります。地味ですが、 天候・市場価格に左右されない確実な収益 という意味で、ポートフォリオに安定性を加える重要な役割を果たします。

参加方法

低圧蓄電池の場合、 アグリゲーター(取りまとめ事業者)経由で参加 するのが一般的です。単独で50kW未満では入札最小単位を満たさないため、複数の蓄電池を束ねて参加する仕組みです。

まとめ

蓄電池の収益は 「JEPXだけ」ではなく、複数市場のレベニュースタック で考えるのが業界標準です。

  • JEPXスポット市場(主要):価格差収益
  • 容量市場(補強):将来の能力に対する固定報酬
  • 需給調整市場(補強):応答速度に応じた報酬

容量市場では年間40万円程度の上乗せが見込めます。続編では、もう一つの追加収益源である 需給調整市場 の仕組みと、3市場を束ねる アグリゲーター の役割を解説します。

続編: 需給調整市場とアグリゲーター ── 蓄電池の応答速度が価値を生む

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