「2,000万円投資して、年間600万円の収益。利回り30%って本当ですか?」
これは投資判断の現場で必ず出る質問です。本記事ではこの 「600万円」という数字の中身を完全に分解 し、何が前提でどう計算されているのかを正直に解説します。
「数字を信じてください」ではなく 「自分で計算できるようになる」 ことを目的にした記事です。
大前提:信和の標準モデル
まず、議論の出発点となる構成を整理します。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 蓄電池容量(DC) | 100kWh |
| 出力(AC) | 50kW未満(低圧区分) |
| 初期費用(標準構成) | 約2,000万円 |
| 想定稼働日数 | 360日/年(メンテ5日除く) |
| 想定設計寿命 | 約10年 |
ここに、JEPX市場での収益モデルを乗せていきます。
収益の計算ロジック
収益は、 1日のサイクル数 × 1サイクルあたりのスプレッド × 容量 で決まります。
基本式
年間収益 = 1日のサイクル数 × 平均スプレッド × 実効容量 × 稼働日数
パラメータごとの仮定
- 1日のサイクル数:1.5回(昼充電→夕放電を1回、深夜充電→朝放電を0.5回)
- 平均スプレッド:20円/kWh(2025-2026年九州エリア実績ベース)
- 実効容量:90kWh(DC100kWhのうち、SOC上下5%を除いた稼働可能量)
- 稼働日数:360日
これを代入して理論上限を計算すると、 年間約972万円 という数字が出ます。
歩留まりを掛けて現実値に
ただしこれは 理論上限 です。実際の運用では予測誤差・経済ロス・市場価格の散らばりがあるため、 30-40%程度の歩留まり を見込みます。
実運用想定: 約 600万円/年(理論上限の60-70%水準)
これが「初年度収益約600万円」の根拠です。
なぜ「平均スプレッド20円」と仮定するのか
「20円というのは妥当か?」という疑問が当然出ます。
2024-2026年の九州エリアJEPXデータでは、月次平均スプレッドは 14円〜26円の範囲で推移 しており、年間平均では 18-22円程度 に収まっています。20円は中央値に近い水準です。
詳しいスプレッド推移とその構造的な拡大要因は、 「JEPXスプレッド推移」 で解説しています。
なぜ「1日1.5サイクル」と仮定するのか
蓄電池は1日2回まで充放電可能ですが、
- 充放電1回ごとに電池が劣化する(サイクル寿命に影響)
- 2回目のスプレッドは1回目より小さいことが多い
ため、 「収益とサイクル寿命のバランスが取れる点が、1日1.5サイクル」 という設計が業界標準です。
まとめ
「年間粗利600万円」という数字は、
- 平均スプレッド20円/kWh
- 1日1.5サイクル
- 90kWh実効容量
- 360日稼働
- 歩留まり60-70%
という前提から導出されたものです。理論上限972万円から、現実的な歩留まりを掛けた値が600万円、という構造です。
ただし、これは 粗利(売電収益) であり、お客様の手取りではありません。ここから運用費・税金・保険などが引かれます。 実際の手取りはいくらか 、続編で計算します。