「2,030万円投資して、年間500万円の収益。これは本当ですか?」
これは投資判断の現場で必ず出る質問です。本記事ではこの 「500万円」という数字の中身を完全に分解 し、何が前提でどう計算されているのかを正直に解説します。
「数字を信じてください」ではなく 「自分で計算できるようになる」 ことを目的にした記事です。
大前提:信和の標準モデル
まず、議論の出発点となる構成を整理します。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 蓄電容量 | 100kWh(使用可能) |
| 系統連系出力 | 49.9kW(低圧区分) |
| 販売価格 | 2,030万円(プレミアム価格・税込/用地紹介手数料込み) |
| 主たる運用先 | 需給調整市場(一次調整力) |
| 想定稼働日数 | 360日/年(メンテ5日除く) |
ここに、需給調整市場での収益モデルを乗せていきます。
収益の計算ロジック
一次調整力の収益は、電気を「売った量」ではなく 「調整力として待機させた容量 × 時間」 に対して支払われます。ここが卸電力市場(JEPX)でのアービトラージと決定的に違う点です。
取引は30分を1コマとして行われ、約定価格は 円/kW/30分 で決まります。
基本式
年間収益 = 出力(kW) × 落札単価(円/kW/30分) × 48コマ × 稼働日数
パラメータごとの仮定
- 出力:49.9kW
- 落札単価:5.8円/kW/30分(当社がEPRXの実データで確認した一次調整力の約定実績は 30分あたり5〜6円/kW程度。その中央付近を採用)
- コマ数:48コマ/日(30分 × 48 = 24時間)
- 稼働日数:360日
これを代入すると、次のようになります。
49.9kW × 5.8円/kW/30分 × 48コマ × 360日 ≒ 約 500万円/年
これが「初年度収益約500万円」の根拠です。
単価レンジで見た場合
EPRX実績の 5〜6円/kW/30分 というレンジをそのまま当てはめると、
5円の場合 ≒ 約 431万円/年
6円の場合 ≒ 約 517万円/年
標準モデルの500万円は、このレンジのほぼ中央に位置する水準です。約定実績の詳細は 「一次調整力の実データ」 で解説しています。
なぜ「5〜6円/kW/30分」と仮定するのか
一次調整力の約定価格は、需給の逼迫度・季節・エリアによって上下します。当社はEPRX(需給調整市場システム)の約定実績を継続的に確認しており、標準ケースにはその実測レンジの中央付近を採用しています。
単価が変われば収益はほぼ比例して動きます。3シナリオでの感応度は次のとおりです。
| シナリオ | 落札単価 | 年間収益 |
|---|---|---|
| 保守的 | 4.9円/kW/30分 | 約420万円 |
| 標準 | 5.8円/kW/30分 | 約500万円 |
| 好調時 | 7.0円/kW/30分 | 約600万円 |
シナリオごとの詳細と投資回収期間は 「3シナリオ試算」 で解説しています。
なぜ「待機だけ」で収益になるのか
蓄電池は、放電することで出力を上げる(上げ調整)ことも、充電することで需要を増やす(下げ調整)こともできます。応答も速いため、系統の周波数を守る調整力として最適な電源です。
そして一次調整力では、実際に充放電の指令が来なくても 「いつでも動ける状態で待機していること」自体に対価が支払われます。これが、稼働率に左右されにくい安定収益をもたらします。
詳しくは 「需給調整市場とアグリゲーター」 を参照ください。
まとめ
「年間粗利500万円」という数字は、
- 出力 49.9kW
- 落札単価 5.8円/kW/30分(EPRX実績 5〜6円のレンジ中央付近)
- 48コマ/日 × 360日稼働
という前提から導出されたものです。相場を読んで当てにいく数字ではなく、 約定実績のレンジに素直に乗せた値 である点が重要です。
ただし、これは 粗利(市場収益) であり、お客様の手取りではありません。ここから地代・運用費・税金・保険などが引かれます。 実際の手取りはいくらか 、続編で計算します。
