前編 で3シナリオによる投資回収期間を見ました。本記事では、 「10年運用すると蓄電池は劣化するのでは?」 という疑問に答えながら、 投資回収後の世界、つまり10年間のトータルリターンを試算します。
蓄電池の経年劣化はどう効くか
「10年運用すると電池は劣化するのでは?」という質問もよく受けます。
リチウムイオン電池の標準的な劣化曲線は、 10年で容量が約80%まで低下 が業界目安です。これは、
- 1年目:100%(90kWh実効)
- 5年目:約90%(81kWh実効)
- 10年目:約80%(72kWh実効)
という曲線をたどります。
劣化込みでの収益試算
このため、 ベースシナリオの計算は年次劣化を平均年85%稼働で割り戻した値 で構成しています。10年トータルでは 概ね一定のキャッシュフロー が出続ける設計です。
実務的には、初期2-3年は理論性能近くで稼働するため収益が高め、後半は劣化で若干低下しますが、 平均化すれば年間税引前CF 約472万円 に着地する計算です。
「回収後」の世界
投資回収後(ベースシナリオなら4年目以降)は、 追加投資なしで純粋なキャッシュフローを生むフェーズ に入ります。
ベースシナリオで10年フル運用した場合の累計を見てみましょう。
10年累計税引前CF = 約 4,700万円
- 初期投資 2,000万円
─────────────────────────────
ネットリターン = 約 2,700万円
つまり、 2,000万円の元手を10年で約4,700万円に増やす 投資となります。年率換算では 約14-16%/年(IRR) に相当します。
10年後の蓄電池はどうなるか
10年経過した蓄電池は、容量80%程度に劣化していますが、 まだ実用上は十分に使えます。選択肢としては、
① 継続運用(11-15年目)
容量低下を許容して継続使用。年間収益は20%程度減りますが、 追加投資なし で延長運用できます。
② 部分リプレース
劣化が進んだセルだけ交換して容量回復。コストは初期投資の30-50%程度。
③ 全面リプレース
新しいシステムに更新。サイト・系統連系を維持したまま、 2台目のサイクル に入る。
④ 中古売却・スクラップ
中古蓄電池市場は形成途上ですが、 EV用などへのリユース需要 が今後拡大する見込み。
蓄電池投資の3つの数字
ここまでの試算をまとめると、蓄電池投資の数字感は次の3つで覚えると分かりやすいです。
| 指標 | 数字 |
|---|---|
| 税引後利回り | 15-17%/年 |
| 投資回収期間(償却込み) | 約 3.5年 |
| 10年累計ネットリターン | 約 +1,300〜2,700万円(税引前後) |
これらの数字は、 JEPX価格の構造的なスプレッド拡大 という前提に支えられています。前提が崩れない限り、再現性のある収益構造といえます。
まとめ
蓄電池の経年劣化(10年で容量80%)は織り込み済みで、ベースシナリオの試算には反映されています。
- 10年運用で 税引前累計CF 約4,700万円
- ネットリターン 約2,700万円
- 年率換算 約14-16% IRR
これが標準的な低圧蓄電池投資のリターン構造です。具体的なお客様の土地・系統容量に応じた個別シミュレーションは、 お問い合わせフォーム よりご依頼ください。
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